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2021年5月14日金曜日

ジオコレ(ストラクチャー)開発記 4 鉄道模型から距離を置くモノ

これは比較的最近の話です。

ジオコレ(ストラクチャー)は、あくまでも鉄道模型の一部です。しかし、発端がバスコレという事もあり、少々鉄道模型とは路線が違いました。

当然、組織的な相違もあります。メインストリームのトミックスとは別動の部隊で対応しているから、常に違うものを模索するのです。


ストラクチャーは主役の車両を盛り立てるおまけというか、影の存在になります。背景として要件を満たすことが重要なので、コスト重視で進めてきました。(ガイシュツ


このような流れから考えると、「解体中の建物」は異質です。

街中などを再現する上で必要ないとは言いませんが、必要性は高くなく売れ数も厳しいと考えるのが順当でしょう。しかし、違う目で見たら話は変わります。

これらの建物は背景であり、主役を引き立てる脇役です。その点は変わりませんが、主役を鉄道模型以外に置いたらどうなるでしょうか。例えば、ガンプラとか、怪獣やロボットなどなどネタは沢山ありますね。

表向きの開発意図は、「建築中の建物」のカウンターです。また、もう一つのターゲットは、上に書いた様な主役をすり替えた場合を想定していました。

普通に企画すると、後者は没になりかねません。固い鉄道模型目線だったら否定されるでしょう。ジオコレは固くなく、尚更ストラクチャーは自由度があったから実現できたと言えます。

 

廃墟と朽ち果てた航空機(簡易ジオラマ) 


「解体中の建物」は、当初の目論見を達成しました。

鉄道模型ファンは無関心に見えますが、ガンプラをはじめとする別目線のユーザーには受け入れられました。また、評価して頂き販売は堅調に推移していました。(現在の情勢は知りえません)

 

その後、更に踏み込む企画が「廃墟」です。

同様に鉄道模型としては、不要に近いネタでしょう。大きすぎるし、街が映えません。それに、設置するなら郊外になるから尚更です。巨大なレイアウトを組む人なら使うかも知れないですが、その位の低いニーズに留まるはず。

ではロボット合わせだったらどうなるかと言えば、「解体中の建物」の発展的なバリエーションになります。モノも大きいですし、内部には広い空間がある。使い方によってはミニジオラマベースになるのです。

それから、武骨な鉄骨を露出する点もフォトジェニックなネタでしょう。 付属の瓦礫や、壁面などを外して遊ぶことも出来ます。

そんな訳で、開発の肝はベースを大きくする点にありました。一定の面積があれば、ロボットを立てておけます。また、寝かすことも出来るでしょう。

おかげさまで、この製品も売れ行きは堅調でした。(略


その後、更に踏み込むネタだったのは、「破壊された建物」です。

この製品は、合計4点あります。その中でも、新型として開発した「破壊された建物C」は、新しい提案として鋭意開発した製品です。

最新の製品には、もっと遊べる何かを入れたいと考えました。

この建物の肝は高さです。ガンプラが直立していても、頭まで隠れるようにしています。また、壁面の開口や、壁の形状はビームライフルなどを突き出すことを想定しています。要するに、アクションシーンの演出用舞台なのです。

また、廃墟同様に床の面を広めに取ることで、ジオラマ活用も出来ます。多少窮屈で良ければ、ロボット2基並べるのも良いでしょう。ステージとしては、十分な機能を持っています。


破壊された建物C(非製品版)


そして、第4弾は?

破壊された建物よりも後に、幾つか新製品が出ています。けれども、当方は関与していません。開発時に多少タッチした程度で、その後はフェードアウトしています。

なお、それらとは別の構想も持っています。もちろん、今更開発に関与することはないので、製品化はありませんけどね。

あまり先んずれば人を制すとも言えません。早すぎてもよろしくないから、開発のペースは慎重にどうぞ。



2021年2月18日木曜日

ジオコレ(ストラクチャー)開発記 3 ロープウェイ

3回目は最も開発に手間が掛かった製品、ロープウェイについて。

この製品は、ジオコレ10周年に合わせてリリースしました。全体を見渡しても動きのある模型は多くないので、少々特別な扱いになっています。


話は時間的に少し遡ります。

「風力発電機」という製品が出ていました。この模型は、モーターによりプロペラを回すものでした。動きのある模型の初回品です。

内部を見ると太陽電池とモーターが組み込まれています。光で発電してプロペラを回しているのですが、供給電力が限られるため普通のモーターでは無理がある。そのため、弱い電源でも回る特殊なモーターが採用されています。

このモーターは省電力なだけではなく、回転方向が左右どちらでも選択できます。普通のモーターは電極の設定で回転方向が決まりますが、そういった制約はないのです。
だから、スイッチを入れてどちらに回転するかは気分で?決まります。

また、回っているモーターを強制的に止めると、その反動で逆転を始めることも出来ます。この挙動はおもしろいですね。と、注目したところから、ロープウェイの開発が始まりました。

 

前置きが長くて失礼しました。

そんな経緯があり、風力発電機あってのロープウェイなのです。

 

実物のロープウェイは1本のケーブルに2台のゴンドラが吊るされています。そして、山頂と麓を往復して人を運びます。そんな乗り物を模型で再現しようとしたら、モーターは必須になります。また、往復させるためにセンサーやスイッチなども重要な要素です。

全部まとめて開発するなら、コストや技術力が伴わないとなりません。一介のストラクチャー担当には容易く取り組めない。でも、モーター1つですべて完結できるなら、コストは低いし何とかなりそうに思えました。

採用したモーターは乾電池で長期間稼働出来ます。そして、センサーなしでの折り返し挙動は、簡易テストで速やかに感触を得ることが出来ました。

その後は、手作りの試作機をいくつも作りながら、長時間運転試験も平行して行っていました。都合半年以上の長い期間の運転です。

モーター以外の機構部分は、シンプルなパーツで構成されています。いずれも、自ら図面を引いたり、フルスクラッチで作った試作機の集大成です。

これら一連の開発工程は、通常の模型と異なるため関係者には余計な手間をお掛けしました。この場を借りて感謝の気持ちを改めてお伝えいたします。

 

余談

ロープウェイは乗り物ですが、自動車とは違います。通常は起伏のある地形を一気に移動するために使われていますよね。山頂と麓という感じがイメージされるでしょう。

その場合、分かりやすい展示を行うにはジオラマが必須になる。そんな事は言うまでもなく当然なので、製品開発のスタートと合わせて、ジオラマ製作も手掛けました。

流石にプロのジオラマと比べて見劣りしますが、コスト低減やストレートに見せたいものを並べられる意味合いからは妥当だったと思っています。仕上げが粗いのは、素人臭さが感じられる要素だなと後から反省しました。



2021年1月22日金曜日

ジオコレ(ストラクチャー)開発記 2 当時唯一の1/80ストラクチャー

ジオコレは基本的に1/150に縮小されたスケールで作られています。

一部は1/80もありますが、建物系は少ないです。


初めて出た1/80ものは、「母べえ」という名称の建物コレクションでした。

既に古い話なので、この製品について書いてみます。


製品名が普通と違うのは、映画のタイトルと合わせているからです。

松竹さんの映画と連携して生まれた製品でした。

当初は1/150での模型化も考えたのですが、実物が小さくて非常に地味になります。それを避けるために上のスケールを採用しています。

 

発売から月日が経って、時々手に入れたいという声も耳にしました。

しかし、ライセンス製品のため権利は既に失効しています。

二度と生産されることはないでしょう。市場在庫もないと思われます。


ネタ話になりますが、主演の吉永小百合さんの絡みについても書いておきます。

最初に吉永さんは固い女優さんです。ライセンス的に。

だから、彼女が商品パッケージに出ることはありません。けれども、ジオコレの製品箱には、映画のポスターをそのまま嵌め込んであり、吉永さんがシッカリ映っています。
非常に珍しいというか、おそらく世界初でしょう?

製品にはフィギュアが含まれています。主要登場人物4人をモデルにしているので、吉永さん(に似せたイメージ)も入っています。スケール的に似ているという事もありませんが、これも世界初?の出来事だったようです。


この製品を取りまとめるにあたり、松竹さんはじめいろいろな方にお世話になりました。あらためて感謝したいと思います。

何度か撮影現場にもお邪魔いたしました。
映画で出てくるシーンの撮影を見学することで、現場の雰囲気とか苦労も少し理解出来た気がします。

完成した映画を見ていて、自分が見学していたシーンが出ると感慨深いですね。あの時、カメラの後ろに何人かが立っていて、その中に自分も含まれていたということになりますから。

 


2021年1月9日土曜日

ジオコレ(ストラクチャー)開発記 1 古い話

ジオコレが始まったのは、20年近く前に遡ります。

その時空には参加していないので、極初期の状況は分かりません。私が参画したのは、少し時間が経ってからの初期位でしょうか。


20年程度前に食玩ブームがありました。

今でも細々と展開されている食玩もありますが、全体的にすっかり下火になっています。理由は幾つか考えられます。第一に値段が高くなった事です。

当時は中国で安く大量に生産された物がありました。今でも同じように受け止める人も多いのでしょうが、事情はかなり変わってしまっています。昔のようなコストでは、到底供給出来ないのです。

中国の経済成長は急激に進んでいます。今でこそ、年率1桁になっていますけど、昔は二桁ありました。その流れを時間経過で計算すると爆上げだと分かるでしょう。

そのため、昔と今を比べると生産コストは2倍位に上がっています。
一方、日本は全く成長していないというか、むしろ実質マイナスになっています。

経済格差が広がるから、仕入れが高いことや購買者が減るというダブルパンチです。そうなれば、安価な食玩などは淘汰されてしまうのです。


話をジオコレなどの模型に向けてみましょう。

多くの中国生産品は、食玩と同じように高コストにシフトしました。これらをストレートに価格に反映すると売れなくなります。したがって、多くのメーカーは利益を削って対応しないとなりません。値上げするのは簡単でも、売れ数が落ちれば死活問題になります。

今も、こんな状況は進行しています。

プラモデルなども同じですね。前は3000円位だったものが、今では6000円以上が普通になってしまいました。(国内生産している物はもう少し穏やかな値上げで済んでいます)
輸入品は元々数が少ないため、利益圧縮は殆ど出来ないでしょう。そのため、ストレートに2倍くらいの価格上昇が起きています。

 

ジオコレ極初期の製品は、バスコレや街コレです。

当時は食玩ブームで、それらの流れに乗ることが出来ました。それ故か、当て物(中身の分からないパッケージ)で発売されています。

この辺りの経緯は、当方存じ上げません。

また、食玩ブーム故に生産数は非常に多かったのが印象的です。
逆の見方をすると、その後急速に生産数が減るため、さらなるコスト上昇に悩むことになるのです。

安くて手軽な製品の路線がブレて、落としどころが難しい。
製品の開発や展開、営業戦略も悩ましくなる訳です。


また、別の事情として中国が近代化している点も見逃せません。

過去の日本と同じように、3K(汚い、臭い、キツイ)仕事は敬遠されます。もちろん、給料が高ければ違うのでしょうが、寧ろ安いでしょうから業界は淘汰される。

これらは更にコストが上がる事や、生産工場が無くなることを意味しています。

そんなことを勘案すると、今度はベトナムなどへの工場シフトが取り沙汰されてきます。しかし、そんなに簡単には進められない。モノづくりというのは、諸々時間や条件が必要なのです。

 


2020年12月31日木曜日

ジオコレ(ストラクチャー)開発記 0 前振りのようなもの

少々前までジオコレの企画開発をしておりました。

タイトルの通り、車両関係ではありません。
ストラクチャー関係の業務です。
多くの方々(鉄道模型等の趣味人)には興味なさそうな分野でしょう。


ジオコレだと、鉄コレとかバスコレがメジャーです。そしてファンも多い。沢山の種類が作られていますし、盛況なジャンルです。

また、最近だとミニカー分野でジオコレ64と謳ったシリーズも展開されています。広い意味でジオコレに入ります。


ジオコレもスタートしてから、18年位経過したでしょうか。その昔、10周年イベントもありました。

今はウイルス騒ぎでイベントは全滅です。ホビーショーはもちろん、展示会なども軒並み出来ない。トミーテックの場合はシュールームがあるので、対策しつつ少しはお披露目出来るのが良いところです。


話を戻しましてストラクチャーの件です。

ストラクチャーというのは、模型的に建物関係を中心にした分野です。具体的には、以下のシリーズでした。

○建物コレクション
○情景コレクション(情景小物、ザ・人間、ザ・樹木)
○ジオラマ素材
○ノンスケール(風力発電機)
○その他(ジオラマベース、電飾キットなど)

商品群として幅広く、手広い製品開発だったと思います。

これらの製品は地味です。一般的なマニアは車両しか見ていない方が多いですし、見ていただいてもオマケに過ぎないでしょう。
しかし、そうは言っても必要な製品だったと思います。

色々と紆余曲折や、よもやまあって進んできた訳です。
それなりに思い出もありますので、幾つか思い出しながら記事にしておこうかと考えています。