2024年5月24日金曜日

模型業界の目線から よもやま話

普通に模型を組むエンドユーザーと、模型を作るメーカーでは見ている世界が違います。

前者だと、自分の興味のある商品に夢中で、それらを取り巻く世界などには気が行かないでしょう。そもそも、そんなことはどうでもいいはずですね。

 

私は両方の目線があったので、色々と思うところもありました。

今回は、そんな方向性の話を少々。

 

 

スケールモデルは矮小な世界です。

モデラーの方には失礼ですし、個人的にも嫌な話ではあります。

要するに売れないということ。

メーカー側からすれば死活問題ですから、何んとかしたいが打つ手は殆どありません。

殆どは往年のユーザーで、脱落しなかった生き残り(少数精鋭)です。比較的若い人もいますが、更に数は少ないのです。

従って、薄利覚悟で生産して金型を回してという仕事をしています。

新型を起こして、新規アイテムをと望まれても簡単には出来ない理由はこれです。

 

一方、ガンプラは広大な世界です。

一時の勢いは無くなったとも聞きますが、それでも生産数は多いです。

プラモデル全体を見た時に、ガンプラが多くてスケールモデルもそれなりにあると受け止める人がいます。しかし、それは大きな間違いです。

ガンプラの前には、スケールモデルなんて塵のようなもの思うのが正しい。それ位の差異がある訳です。物の価値や、主観は抜きにしてのお話ですから悪しからず。

 

模型を扱うお店に行くと、ガンプラの面積が大きいです。

しかし、艦船や航空機、戦車などの棚もそれなりにあります。塗料などもしかり。

けれども、面積に応じた売り上げがある訳ではありません。ラインナップを広げないとならないから持っているだけで、販売効率を考えたらガンプラだけの方が良い筈です。

昨今、コスパとかタイパという言葉が耳に響きますが、それを実践すると模型店も矮小化してガンプラのみになってしまう。

一見効率的ですが、それではダメだと思います。

唯の感情論ではありません。商売ベースでダメになるでしょう。



模型業界は受注生産です。

発売の3~6か月くらい前に、メーカーから製品情報が流れます。

それを受けて、販売店や問屋が必要数を発注し、その数字を元に生産数が決まります。

エンドユーザーの一定数は、お店で見て買いたいと思うでしょうし、少なくもある程度の市場評価が見えてから買おうという人も居る。

でも、予約しないと生産数のカウントから漏れてしまいます。最悪は買えないことになるでしょう。

それなりに売れそうな製品は、メーカー含めて少し多めに生産を掛けます。でも、人気があるということは、瞬殺の可能性も高いのです。

 

その昔、ジオコレの神社を世に出しました。

金曜日にお店に納品し、その日から販売開始だったかと思います。そして、土日が明けて月曜日に追加注文を頂いて、メーカー在庫は無くなりました。

その後、苦情を沢山頂きました。大変申し訳ありませんでした。



最近だと転売ヤーの影響も含めて、人気のあるものは瞬殺になります。

そうなると、買えない苦情が沢山上がってきますが、多くの人は予約をしていません。悪循環になっているという事を理解して頂ければ良いのでしょうが、、、。


昔は沢山作って、沢山売ってという循環がありました。

そんな環境下なら、在庫を沢山持っても良いのでしょう。しかし、時代が違います。

在庫が積みあがると、非情な経営者殿からの圧力が強まってしまう。その先は、どうなるか想像してみてください。営利企業とはそういうものです。



先日、某yahoo の記事でガンプラの供給不足を考察する?記事がありました。

内容をザっと見ると、過去の大量生産時代での失敗を紹介していて、それを教訓にして生産を絞っていると読める記事でした。

この話は外部の方の考察と、それっぽいタイトルでの釣り要素で成り立っています。

古い時代の大量生産方式の話は的外れです。歴史的な事実ではありますが、今の時代には合いません。バンダイも受注生産なのです。過剰生産は許可が下りないでしょう。

昔は作れば売れました。しかし、時代はどんどん変わっています。

ガンプラには多数のラインナップがあります。足りないと言っても、すぐに作る訳には行きません。作るにしても数は絞らざるを得ない。

全体の在庫や販売計画もありますから、ユーザー目線では動ける訳がありません。


在庫が沢山あると、経営者目線では減点です。

銀行やコンサルが入れば、廃棄処分の圧力も高まります。捨てたら損失でも、経理的目線から捨てる選択は普通にあるのです。

そんなリスクは誰も取りたくありませんよね。




話が変わりますが、実在する車両などを模型化する場合はライセンスが必要です。

権利を持っている相手にお願いして、許諾を取ることになります。

この作業は手間ですし、コストも掛かります。また、相手が承諾するとも限りません。


とある仕様の製品を望む声が多くても、許諾が下りないケースもあります。具体的には書きませんが、色々とその手の話はあります。


勘違いされている方もいるようですが、権利者から図面を提供されるとは限りません。

貰えても参考資料的なものになることが多いでしょう。

そのため、模型を作るには調査や取材が必要になります。

実物の寸法測定、写真測定、スキャン。後は、人の目でイメージが合うかどうかのチェックです。デフォルメするかどうか、その点も製品化には重要になります。


ライセンス料等は色々。

高コストなものは、販売価格もかなり上げないとなりません。

それでも売れるかどうかが重要な判断になります。

 

 


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